2010年3月3日水曜日

察する文化のある日本-3


前回は「日本のお客さん」は「西洋のお客さん」とは洞察力と価値観が違っている。という話を説明しました。そして、日本のお客さんに対するアプローチは、いわゆる「一般的なプレゼンテーション」とはまったく逆の方向でアプローチしていかなければならないことを説明しました。
 
さて、では1つ目の実例をご紹介していきたいと思います。
 
サラリーマン時代、乗換駅だった新宿駅には、いくつものキオスクがありました。いくつものJRの路線と、地下鉄の乗換え駅でしたから通勤時間になると大勢の人たちが駅の中を行き交うわけです。
 
そういう人を狙って、小さなキオスクがいくつもありました。当時はコンビニエンス・ストアなどはありませんでしたから、駅のキオスクが通勤途中のコンビニ代りとなっていたのです。
 
私が池袋の百貨店の社員として、新宿駅で乗換えをしていたころ、いつも乗換え通路に、ひとつ目立つ「小さなキオスク」がありました。
 
その店は、新聞、雑誌、タバコ、ライター、ガム、キャンディー、チョコレート、パン、牛乳、といった、きわめて日常的な商品を扱っていました。
 
広い駅ですから、そういう店が私の通る通路に3つも並んでいたのですが、その中の1店舗だけに、おもしろいほど人が集まって買い物をするのです。
 
私もまた、その店でチョイチョイ買い物をしていたのです。私は、逆に同じぐらいの店の大きさで、同じような商品を扱っている店に、どうして人が集まらないのかが気になり出しました。
 
逆にいえば、なぜ、このお店ばかりに人が集まってくるのか不思議に思ったのです。他の2つのお店で、通勤途中に買い物をしてみると、その謎はすぐに解けました。
 
そのお店の「店員のおばさん」がニコニコと元気な声で「ありがとう」「ありがとう」というたびに、お客さんが、まるで吸い寄せられるように集まっていくのです。

私も良く、朝食のパンと牛乳を、そのお店で買っていたのですが、おばさんは深々と頭を下げるわけでもなく、ニコッと笑顔で、まっすぐ私を見て「ありがとう」という・・・
 
ところが、この「ありがとう」に、また人が吸い寄せられていくのです。他の店との違いは、まさに、この「ありがとう」の声でした。
 
他の2つのお店の人たちは「私は、上司に言われたことはやるけれど、それ以上、上司にいわれてもいないムダなことなどする必要がない」といわんばかりの対応をしていたのです。

その声も、別に美しい声ではなく、びっくりするような美人でもなかったのですが・・・あの笑顔の「ありがとう」は、3つのお店のうち、このお店しかなかったのです。
 

カンタンにいえば「マニュアル通りの店」と「日本の商人の心を持った人が商いをしているお店」との違いだといえるでしょう。

私たち「日本人」は、そこで働いている人が「お客さんのために我を捨てて、一生懸命に、お客さんのために笑顔を作っている人」なのか、「自分のためにマニュアル通りの仕事をしている人」なのかを、一瞬で見抜く「洞察力」=「察するチカラ」を持ち合わせているのです。

日本のお客さんは「マニュアルで動いているスタッフ」を嫌う傾向にあるのです。つまり「自分が【ラクできれば良い】、自分だけが【トクできれば良い】」という人を避け、「お客さんのために我を捨てて、笑顔を一生懸命に作っている人、お客さんのために我を捨てて、ありがとうと感謝する人」から買いたいと、心を察する能力があるのです。


他にもいくつか実例を紹介しいくとさらに理解しやすいものとなるのでしょうが・・・ずいぶんと長くなってしまったので・・・ 
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今日のところは事例をひとつ紹介したところで筆を置くことにしましょう。




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